クロッカスと雪(旭川・緑ヶ丘便り17)

 

かつて札幌で18年間住んだ時、春の象徴はクロッカスであった。雪の山が段々低くなり土が見え始める。その時、花壇で最初に芽を出すのがクロッカスである。チューリップ等よりも先に、細く弱々しく見える芽が出て来る。弱々しく見えても確実にしっかりと一人立ちするように、天に向かって伸びてくる。芽を出してから数日で、黄色や紫の蕾を膨らませ花が開く。札幌でクロッカスの開花は4月第一週であった。

 

ここ旭川でクロッカスの芽を見たのは48日であった。花は咲いていなかった。しかしクロッカスの芽を見た時「お。クロッカスだ!」と声を上げた。その23日後、そのクロッカスの花が咲いていた。温暖化により旭川も以前より随分暖かくなり、雪も少なくなったと言われる。しかし、それでもクロッカスの開花は3040年前の札幌よりは遅いようである。40年前、雪がとけた農家の庭先一面に咲き誇っていたクロッカスに感動した。そして思わずその玄関に行き、「クロッカスを分けて下さい」と頼んだ。農家の人は、あまりの厚かましさにあきれながら、「ご覧の通りもう満開になっているので、今お分けすることはできません。今年の秋に来なさい。」と仰った。その言葉に感謝し、その年の秋再び訪れ、球根をたくさんもらった。そして教会の庭や道端に植えた。次の年の春が楽しみであった。雪解けが待ち遠しかった。春になり雪が消えた庭や道端にクロッカスの芽が出ているかどうかドキドキした。芽を見つけた時の嬉しかったこと、花が咲いた時の感動。老人になってほとんど忘れていたが、旭川でクロッカスの芽を見た時、感動がよみがえって来た。

 

緑が丘教会に小さな花壇がある。花壇の雪がようやく消えた。11日、そこにクロッカスの芽が出ているのを発見した。前任のルツ・デュエックさん(カナダ出身のOMF宣教師)が植えたのだろうか。今日くらいには花が開くかも知れないと思っていた。

 

ところが、今朝(13日)は明け方から少し雪が降った。ラジオの気象予報だと、今朝の積雪は3㎝という。気温はマイナス1.6℃とのことである。まだ、確認はしていないが花は開かず寒さに耐えるように閉ざしているかもしれない。

 

しかし、クロッカスと雪を共に見るのも感動である。秋に、北海道では紅葉と雪を同時に見ることが出来る。旭岳の紅葉に雪が降り注ぐという大袈裟なものでなくても、街路樹の真っ赤になったナナカマドやドウダンが真っ白な雪に覆われたのは本州では見られない美しさである。それと同じように、春小さなクロッカスの上に降り注いだ雪もまた美しい。色鮮やかな紫、黄の花々、茎の緑に真っ白な雪である。確かに北海道の冬は厳しい。その中にも旭川の寒さは一番とは言えないかもしれないが、札幌の比ではない。寒さの厳しさの半面、春の喜びもひとしおである。美しさも比類ない。クロッカスが雪化粧するとは中々オシャレではないか。それ以上にこの時期にクロッカスが咲き雪が降るのを味わうのは、主イエス様の十字架の死と三日目に復活されたイースターに相応しいことではないかと思ったりする。聖書でクロッカスはサフランという名であることはご承知と思うが。