山が光る(旭川緑ヶ丘便り19)

 

 旭川は周囲を山に囲まれた盆地の街である。盆地の街として有名なのは旭川だけでなく、本州にもいくつかある。甲府、松本、米沢、山形等である。盆地の街は、夏は暑く冬は寒いのが特徴の一つである。だから夏は最高気温、冬は最低気温をこれらの街が記録する。旭川の人たちによると夏の暑さは半端ではないそうである。しかも、旭川では冷房がない所が多く、本州より夏は暑いことになる。松本や甲府ではどうだろうか。

 

 夏の暑さはともかくとして、周囲を山に囲まれた盆地の街は、春先が美しい。それは周囲の山々が輝くのである。松本では西の空に穂高をはじめ峰々が、春の日差しに照らされて輝くのである。松本を訪れる人たちだけでなく、松本に住む人たちにとって、春山が輝くのを目にする時、春の到来に胸躍らせ、長かった冬の終わりを実感するだろう。これまで何度も春の松本を訪れたが、アルプスが輝く美しさは何度見ても新鮮である。甲府の春はどのように山が輝くのか実際に見たことがないのが残念である。八ヶ岳が輝くのだろうか。甲府盆地の春といえば、盆地一面に咲く桃の花やぶどうの花が目に浮かんでくる。山々の間に富士山が見えるが、この富士山が輝くとすれば、これはまた格別な絶景だろう。

 

 さて、同じ盆地と言っても旭川は他とはいくつか異なると思う。先述のように松本も甲府も盆地とは言っても周囲が高い山に囲まれているわけではない。勿論、全体的に周囲に山があることは確かである。が全てが際立って高い山ではなく、一部と言っていいだろう。松本からは西側のアルプス、甲府は同じく西側の八ヶ岳と言うようにである。

 

 しかし旭川はほぼ周囲を高い山が囲んでいる。東側にそびえているのは道内随一の旭岳を含む大雪連峰である。その南側に連なって見えるのは十勝岳連峰である。西側は芦別岳に連なる峰々である。北側には擂鉢山、千歳山の峰々である。さらに東側に東山、月見山、安足山、米飯山の峰々が連なる。このように旭川は文字通り四方を山に囲まれている。これらの全ての山が三千メートル級ではない。道内最高の旭岳でも標高2290mである。ところが、北海道の山は緯度が高いので気候状況は、標高二千メートル級は本州の三千メートル級と同じである。だから、標高が二千メートル級だったり、千メートル級であっても、山の雪の深さや質は本州の三千メートル、二千メートル級に等しい。旭川を囲む山々は標高以上に、春の陽差しに輝くのである。

 

 午前中は、旭川の西にある芦別岳の峰々が朝日に照らされて輝く。午後になると、西側からの陽差しによって旭岳、十勝岳を中心に大雪連峰と十勝連峰が輝くのである。このように旭川では一日中、山が輝くのである。小生たちのように新参者だけでなく、旭川に長年住む人々にとっても、この山々が輝く光景にはいつも感動させられると言う。

 

 小生は旧約聖書の詩篇の一節を思い出すのである。

 

  わたしは山に向って目を上げる。

 

  わたしの助けは、どこから来るのだろうか。

 

  わたしの助けは、天地を造られた主から来る。    詩篇121:1-2