きつねとカラス(旭川緑ヶ丘便り23)

 

 「さすが旭川」と思うことがある。緑が丘教会があるのは、旭川市の東南部の丘陵地帯である。約40年前に新興住宅地として開発されるまでは、ほとんど人も住まない森林だった所である。これまでも何度も述べたように、現在は旭川でも屈指の美しい住宅地である。そのド真ん中のような所に緑が丘教会はある。

 

 その教会の前を何と、「きつね」サマが堂々と散歩しているではないですか。そして信号機のある交差点を渡って行ったのである。そのきつねサマが、信号を確かめたのかどうかまでは確認できなかった。この緑が丘の住宅街をきつねが歩くのは珍しいことではないらしい。これが「さすが旭川」の内容である。教会の皆さんに話しても「ああ、そう」で終わってしまう。さらに先日は、教会の近くの道できつねが車にひかれて死んでいたとも聞いた。それでも、まだ緑が丘で「熊」には出会っていない。

 

 しかしである。「さすが旭川」と言えることに出会った。

 

 やはり教会からは近い所での出来事である。住宅と住宅の間の空き地に一匹のきつねがいた。そのきつねが歩道に出て来て車道を渡るかどうか迷っている。渡る決心が出来ないらしく、そのまま歩道を歩きだした。すると何と「二羽のカラス」がきつねを目掛けて急降下して来た。きつねも負けじとカラスに向って威嚇するように向って行く。カラスは二羽で本気で襲おうとしているのか、からかっているのかわからないが、しばらくカラス二羽ときつねは住宅街の歩道でケンカらしきことをしているのである。残念ながらカメラを持っていなかった。もし二羽のカラスときつねの喧嘩を撮っていれば、写真コンクールで入選ものかもしれない。信じられないような情景だが、これはまぎれもなく歴史的出来事なのである。「さすが旭川」の一面である。

 

 かつて石川県能美市の「辰口キリスト教会」で奉仕していた時のことを思い出した。近くに「手取川」という大きな川があった。そこの土手を歩いていると、カラスが近寄って来る。襲ってくるような感じではなく、何か話しかけてくる様子に見える。こちらも話し掛ける相手はおらずさみしい思いを抱いて歩いている。だからカラスに「おはよう」と挨拶をしてみた。するとカラスは心なしか喜び「カ-おはよう」と答えてくれたように思った。一度そんなことをすると、次の日も、その次の日もカラスに「おはよう」と言うようになった。愚妻にそれを話すと軽蔑された。

 

 ところがである、トンビがカラスを襲うように飛んでくる。土手は少し高い所にあるので、トンビが自分の目線よりも下に飛んでくる。これは非常に新鮮であった。トンビと言えば、空高く「ピーヒョロロ」と鳴いて飛ぶものと考えていた。それが、自分の目線より下、しかも足もとよりも下を静かに飛んで近づいてくるのである。だからトンビにも勿論「おはよう」と挨拶する。小生の朝の友はカラスとトンビだった。その友であるカラスとトンビが時々喧嘩をしているようになる。喧嘩なのか、じゃれ合っているのかは分からない。このカラスとトンビの関係が、小生の友としてのカラスとトンビと言うのは「さすが辰口」なのかもしれない。

 

 「さすが辰口」の出来事も「さすが旭川」の出来事もちょっと信じ難いと思う方が多いでしょう。しかし両方とも「歴史的出来事」である。証明は出来ない。再現も出来ない。しかし事実なのである。

 

イエス様の十字架と復活も、聖霊降臨も証明も再現も出来ない「歴史的事実」である。これらを信じるのは不可能と思う人が多いが、私たちの日常生活では証明も再現も不可能な事実を信じて、初めて人間の交流や関係が成り立っていることに気付かされる。