1:12そこで、彼らはオリーブという山からエルサレムに帰った。この山はエルサレムの近くにあって、安息日の道のりほどの距離であった。 13彼らは町にはいると、泊まっている屋上の間に上がった。この人々は、ペテロとヨハネとヤコブとアンデレ、ピリポとトマス、バルトロマイとマタイ、アルパヨの子ヤコブと熱心党員シモンとヤコブの子ユダであった。 14この人たちは、婦人たちやイエスの母マリヤ、およびイエスの兄弟たちとともに、みな心を合わせ、祈りに専念していた。
弟子たちは、イエス様が昇天されたオリーブ山からエルサレムに帰ってきました。「安息日の道のりほどの距離」（12）とは、1.2kmくらいです。ですから、弟子たちはイエス様が昇天された後、その足ですぐ、家の屋上に集まって祈り始めたことがわかります。「神様、聖霊様をお送り下さい」、彼らは切実にこの祈りをささげたことでしょう。なぜなら、彼らは聖霊なる神様の力なしでは何もできない、ということを自覚していたからです。弟子たちは、イエス様が十字架にかけられる時、己の無力さを知りました。ユダは金でイエス様を裏切り、他の弟子は死を恐れて逃げてしまいました。しかし神様なるイエス様は、ご自身の力だけで死から復活されたのです。彼らにとって、十字架の出来事とは自分の限界を知ると同時に、限りない神様の力、死にも勝利する神様の力を体験する出来事でした。自分の力ではなく、神様の力でなければ宣教できない、この事を心に刻んだ彼らの祈りは、心の底からの祈りだったでしょう。私たちも、今目の前に立ち塞がっている問題に対し何もできないと思う時、神様の力に頼る事を教えられます。さらにこの弟子たちの祈りから学べることは、彼らがすべてのことを祈りつつ行ったということです。「そのころ」（15）は、直訳すると「この日々の中で」です。つまり、祈りに専念していた日々の中で、弟子たちは新しい使徒を選んだわけです。そしてこの使徒選びを皮切りに、常に神様に祈りつつ福音宣教を進めていきました。私たち個人も教会も、祈りつつ宣教を進めていきましょう。ぜひ、教会の諸活動のために、兄弟姉妹のために祈る時間を持ちたいと思います。
また、弟子たちは一つの場所に集まり、心を合わせて祈っていました。神学者ボンヘッファーはナチス政権に対抗して何度も投獄され、家族や教会員と離れ離れになりました。彼は著書「共に生きる生活」の中で、キリスト者が共に集まることは普通ではない恵みだと語っています。私たちは、弟子たちのように集まって祈ることのできる恵みに感謝したいと思います。この教会に最近、次々と奉仕者が与えられ、それぞれできることを行っていることに対し、神様に感謝しています。教会が年間聖句に基づいて、心合わせて進んでいることを実感しています。ただ、祈祷会など祈りの奉仕も大切だと思っています。
さて、なぜ新しい使徒を選ばなければならなかったのでしょうか。それはイスカリオテのユダがイエス様を裏切った結果、死んでしまったからです（18～19）。彼の死に対し120人の弟子たちには、イエス様は間違ってユダを選んだのか、神様の計画は不完全だったのかという疑問が生じました。そこでペテロは、ユダの裏切りは旧約聖書に預言されていると主張しました（16）。即ち、ユダの裏切りも神様の計画の内にあった、と説明しているのです。弟子たちは、神様の計画はもっと順風満帆だと思っていたのではないでしょうか。私たちも神様がいるのになぜこんな目に、と呟いたことがあるかもしれません。多くの場合、神様の計画は人間の想像を絶するものです。私たちは神様の計画を信じて、神様を愛する者として生き続けたいと思います（ローマ8：28）。
使徒の12人は、イスラエルの十二部族を象徴しています。イスラエルの人々は、自分たちだけが真実の神様に愛され、救われると信じていました。しかしイエス様の十字架と復活によって、国籍、性別、身分ではなく、信仰によって救われることが明らかにされ、新しいイスラエルの民が与えられました。この12人の使徒は、新しいイスラエルの礎となる者たちです。ですから、その数はイスラエルを象徴する12でなければなりませんでした。そして使徒たちは、新しい使徒をくじで選びました。これは無責任のように思えるかもしれませんが、使徒を決めることがあまりにも重要すぎるので、人間の思いが一切入らない方がいいと判断したのでしょう。彼らは、人の心をすべて知っておられる神様に、その判断をゆだねたのです。こうしてくじはマッテヤにあたり、十二使徒を中心にして新しいイスラエルの民が広がっていく準備ができたのでした。マッテヤは100％神様によって選ばれた使徒であり、他の使徒たちもすべて神様に選ばれ、整えられた者たちでした。そして続く2章で彼らに聖霊が下って、福音が広がっていきます。「使徒の働き」をじっくり読むとわかることは、すべての出来事の主導権を握っておられるのは、常に神様だということです。この教会も、主導権を握るのは神様であるべきです。
天の父なる神様、神様によって選ばれ、整えられ、遣わされた使徒たちによって、宣教のわざが始まりました。神様の計画は、私たちの想像をはるかに超えるものです。私たちは神様によってこの場所に集められていますが、一人一人がどのように繋がり、どのように神様のために用いられるのか、すべてをはっきりとはわかりません。しかし、神様が私たち一人一人に、この教会に、私たちの想像をはるかに超えた計画を用意して下さっていることを信じて、祈りつつ歩んでいくことができるようにして下さい。（2018年4月15日礼拝 武田遣嗣牧師）
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