フーテン僕使ウィーン便り⑤

 

⑤テレビのない生活

 

 

 

ここウィーン教会の牧師館にはテレビがない。あったとしてもドイツ語を理解しない小生たちには役立たない。

 

 テレビがない生活は久しぶりである。いや、もしかしたら結婚以来テレビは常にあったように思う。それでも2005年に浜田山教会を辞して、石川県能美市にある長老教会辰口キリスト教会で奉仕した約一年半と中咽頭癌で療養していた約一年半はテレビのない生活だった。2005年まではテレビはあってもほとんど観ることはなかった。時間の余裕がなかったからである。

 

 ところが2008年中咽頭癌が寛解状態になり、那珂湊キリスト教会に赴任してからは、教会の方が備えてくれたテレビを見るようになった。それまで見たことがなかったので非常に新鮮で面白かった。そのため、毎夜夕食後、見るようになり、いわば「サスペンス依存症」である。サスペンスドラマは面白かったが、最近はマンネリに感動しなくなった。それでも見てしまうところが「サスペンス依存症」の悲しいところである。

 

 そんな時、こうしてウィーンに遣わされ、牧師館にテレビがないことに一抹の不安、淋しさがあった。「テレビがない生活」に自信がなかった。

 

 しかし、テレビのない生活もまだ一週間しか経っていないが。テレビがなく、テレビを見ない分、時間が出来た。出来た時間に本を読むことが出来る。しばらく忘れていた本に親しむことを取り戻すためには絶好の機会だと思うようになった。また夫婦二人の生活に会話が少しは弾むようになった。中咽頭癌と類天疱瘡で体の各器官が苦しいため、小生はしかめ面をして黙し勝ちであるが、テレビを見ないため、二人で何か話す以外ないのである。こうしてテレビのない生活から新しい夫婦生活が始まった。さて、これからどう続くであろう。