フーテン僕使ウィーン便り⑦、⑧

 

プログラム満載の楽友協会

 

 

  ウィーンには音楽、オペラを聴く主なホールは五つあると言われる。国立オペラ座、フォルクス・オーパー、コンチェルトハウス、アン・デア・ウィーンと楽友協会である。勿論その他に諸教会でチャペルコンサートが連日のように行われている。演奏会が行われない日は一日としてないに違いない。

 どこのコンサートホールも最高水準であるが、その中で自他ともに世界一のホールと認めるのは、楽友協会である。だから、演奏家にとって楽友協会で演奏するのは憧れであろう。アメリカのカーネギーホールが一度は演奏したいホールの第一であるように日本では言われる。しかし世界的に見ると、ヨーロッパ人の音楽家にとってカーネギーホールはどれほどの評価があるのだろうか。

 

 とにかく楽友協会は世界的レベルの音楽家が一度は立ちたいホールであることは間違いない。当地に来て数日経った時、「体」がウィ―ンを実体験できるよう、牧師館からウィ―ン中心部に出かけた。何より楽友協会に行くことにした。そこでウィ―ンフィルの演奏日程とチケットの「空」状況を知ろうと思った。楽友協会チケット売り場は正面から見て左側の裏側にあった。窓口があるだけというものではなく、立派な入り口があり、中には3~4人が対応していた。そこにチケットを求めて次から次に人が来た。その中の一隅に楽友協会のスケジュール表が掲げてあり、小冊子にもなって置いてあった。その表を見て驚いた。毎日演奏会が行われている。世界中から種々の演奏家がここで演奏会を開いているのである。一日に一つの演奏会ではない。ほとんど毎日複数、多い時は4~5の演奏会である。早い時は朝9時から行われるのである。楽友協会には黄金のホールとブラームスホールのほか、四つのホールがある。これらを用いて毎日演奏会が行われているのに驚いた。そして、楽友協会が決してウィーンフィルだけのものではなく、大きく門戸を開いたホールであることに感嘆したのである。

 

 

 

⑧不適格を教えられる

 

  

 ウィーンに来て先週一週間は何冊かの本を読んだ。牧師館にある本である。信仰書もあれば無関係なものもある。最初に読んだのは信仰に無関係な数冊である。無関係と言ったが、実際はどんな本でも信仰に無関係ではない。信仰が人間の生きるすべての領域に関わっているのだから。どんな分野の本でも信仰に関わり、教えられることは多い。そういう訳で、いわゆる「信仰関係」の本を避けたのである。しかし数冊しかなくすぐ読み終わったので、仕方なくいわゆる「信仰関係」を読んだのである。『マザーテレサの生活』『三浦綾子難病日記』『金井由信 わが恵み汝に足れり』の三冊を読んだ。マザーテレサの徹底的に主に従い献げ尽くし、貧しく生きる姿があった。これまで彼女について何冊か読んだことはあったが、新たに強烈に自分の姿が問われた。三浦綾子さんの『難病日記』は、三浦さんとは何度か個人的に交わりもあり、懐かしさもあった。また4月下旬まで旭川の緑が丘教会で奉仕していたので、記された場所を実体験しているようであった。さらに文中に出て来る多くの人々の中に小生もよく知っている人々がたくさんいた。それはそれとして、何よりも三浦さんがパーキンソンで苦闘しながら、人々を愛し主を愛し、主の栄光のために生き抜く姿に脱帽した。三冊目の金井由信牧師『わが恵み汝に足れり』では小生が如何にいい加減な信仰者であり、働き人であるかを教えられた。金井牧師は小生が札幌・北栄キリスト教会に赴任した1975年、既に札幌の「美薗教会」におられた。そして82年に明石人丸教会に転任になるまで個人的にも交わりが与えられ、多くのことを教えられた。しかしこの本によって、金井牧師が信仰に導かれ、1957年に伝道者になり、2010年に召されるまで、唯主に祈り、主に頼って、すべての歩みをされたのを知った。札幌での交わりでは金井牧師の本当の姿を知ることがなかった。今思えば残念である。とにかく金井牧師が8人の子供さんを養育するにも唯主に献げて生きられた様子が手に取るように分かった。それに引き換え、小生は生ぬるく、不徹底で、信仰者と言えるようなものでないことを教えられるばかりである。下垂体機能障害と類天疱瘡の難病故に服薬の毎日。体は寝ていても起きていても辛い。不平不満ばかりである。こんな者がクリスチャンだとか僕使と言えようか。本当に悔い改めさせられ、唯々憐れみを求めるばかりである。