フーテン僕使ウィーン便り⑫

 

⑫騒音

 

 

 

 牧師館の騒音に少々閉口している。ウィーンは音楽の都であるし、騒音などはなく、静かであるとばかり思っていた。以前二度ウィーン教会で奉仕した時、小生たちが生活した牧師館は全く静かであった。牧師館は小高い丘のようなところに建ち、下のトラム(路面電車)が走っている通りから150段以上 階段を上がらなければならなかった。だからトラムや車の音も何も聞こえなかった。それで騒音に悩むことは全くなかったのだ。

 

 現在の牧師館はトラムの走る道に面し、ちょうど信号機のある交差点にあり3階(日本の4階)である。以前トラムは静かだとだと思っていたが、今回はそのトラムが大変な大風や爆音のように聞こえる。また、ここは車がかなりのスピードで走る。少しのことでクラクションも鳴らす。

 

 それで、CDやラジオで音楽を聴くことがままならない。途切れ途切れにしか聴けないのである。

 

 これまでパリでもブリュッセルでも牧師館は静かであった。パリでは3か所の牧師館に住んだ。14区のモンパルナスの近くの商店街。ここは買い物も非常に便利であったが静かであった。16区の時は住宅地にありこれも全く騒音などなかった。三つ目のバスチーユ広場近くも、全く問題なしだった。実は教会の兄姉は「牧師館周辺はうるさいので」と心配して下さった。東京で言えば歌舞伎町のド真ん中のようなところにあって、隣のビルは演奏会場(もしかしたらディスコ)のようなもので夜中過ぎまでその音が響くようなのである。しかし小生たちが鈍いのか、殆ど騒音らしいものはなかった。201511月にパリ教会に着任した直後、パリ連続多発テロがあったため、劇場等の活動規制があったのかもしれない。とにかくパリでは意外と騒音には悩まなかった。ブリュッセルは半地下の牧師館で大通りに面していたが、そううるさくはなかった。

 

 海外だけでなく、1972年以来の牧師生活で騒音には悩まなかった。浜田山でも北栄でも、那珂湊でも緑が丘でも、牧師館は静かそのものであった。小生のこんな姿を見て「こんなに悩むとは思わなかったわ」と澄代は言う。確かに小生にとっても意外であった。どんなに騒がしくても平気なのが小生の賜物だと言っていたくらいだから。やはりこんなに悩むのは、小生の体力がそれに耐えられない程弱っているのかもしれない。