フーテン僕使ウィーン便り⑳

 

⑳ホイリゲ

 

 

 

 ウィーンの北側に続く小高い丘は絶好のブドウの栽培地である。南側から斜面に陽と風が降り注ぐからである。日本でも甲府盆地の北側斜面にはブドウ畑が連なっており、美味しい甲州ブドウが産するのと同じである。

 

 そのウィーンのブドウ畑の下にあるのがグリンツィングとハイリゲンシュタットであり、そこに「ホイリゲ」という、ワイン中心の居酒屋が軒を並べている。「ホイリゲ」というのは「今年の」という意味でワイン新酒をさしている。と同時に新酒を飲ませる居酒屋をも指す。このホイリゲは1780年代、皇帝ヨーゼフ2世が一年間300日以内という条件でウィーンのブドウ栽培農家に自家製のワインを出す許可を出したことがきっかけで始まったと言う。当初はブドウ栽培農家のサイドビジネスであったが次第に人気が高まって来て、今日のようになったと言う。

 

 ホイリゲの中にはヨーゼフ2世の許可以前1683年から続くものがあり、1817年にはベートーヴェンがハイリゲンシュタットに滞在し「エロイカ」の一部を作曲したと言われて、店内に写真も飾られている。またユンクやフロイト、ルドルフ3世皇太子等もよく通ったホイリゲ、1200人収容可能な広大なホイリゲなどもあるらしい

 

 次女を一度ホイリゲに連れて行ってやった。折角ウィーンに来たのだからその雰囲気を味あわせてやりたいと思ったのだ。昼前にグリンツィングに着き1130分から開店というホイリゲに行ったところが都合で12時からという。仕方なく坂道を散策した。するとブドウ畑が両側に広がって、登り切った所に休憩所がありベンチが3個置いてあった。一休みして立ち上がり振り向くとウィーンの町が一望できた。思いがけないプレゼントであった。

 

 さて坂道を下り先のホイリゲに戻った。中庭は大きなプラタナスの木もあり落ち着いた雰囲気であった。小生たち三人は木陰のテーブルに着いた。昼食事はあまり客がおらず観光客らしいグループがバラバラにいる程度で静かであった。ウィーン名物のシュニッツェル(仔牛肉を薄く叩いたカツレツ)、ラムの煮込みとウィーンのポテトサラダを注文した。どれも大変美味しかったが三人では食べきれず持ち帰った。特筆すべきことは、折角だからとワインを注文し少し味わったことである。小生にとってはワインはあまり美味しいとは思えずほろ苦くしか感じられない。どうしたら美味しいと味わえるようになるのだろうか。不思議である。

 

左上:

ホイリゲの入口の杉の枝。ホイリゲの目印のようになっていますが、もともとは新酒ができたというしるし。日本でも造り酒屋で新酒ができた時につるす「杉玉」がありますね。

 

右上:

教会の岡崎さんに誘われて。那珂湊教会に頂いた絵二点はこの方の作品。二人が持っているのは ワイン? ジュース?