主にあって前に進む　使徒の働き8章1～8節

　私たちの人生には、何度か転機がありますが、主は私たちを前に進ませて下さいます。今日は、三つのことをお話しします。

　第一は、祝福を信じて前に進むということです。使徒の働き8章は、これまでと舞台が変わりエルサレムの外、全世界へと広がっていきます。そのきっかけとなったのは、ステパノの死でした。彼は教会のリーダーの一人でしたが、権力者たちに殺され、それに調子づいた権力者たちは、教会のメンバーをエルサレムから追い出してしまいました（1）。しかし、クリスチャンが諸地方に散らされたことにより、より広い地方に福音が広がりました。ステパノの死がなければ、クリスチャンは散らされなかったのです。またサウロは、後に神様のことを宣べ伝える者となっていきます。即ち8：1～3までの悲惨な状況は、後に益となっていったのです（ロマ8：28）。私たちには、なぜこんな目に合うのだと思うことが度々あります。しかし、神様を愛する者の人生を、主は必ず益として下さいます。この信仰を持って、私たちは前に進んで行きたいと思います。

　第二は、悲しみを越えて前に進むということです。ピリポをはじめ、多くの人がサマリヤへ下って行きましたが、これはとても不思議なことでした。なぜなら、エルサレム教会の人たちはユダヤ人であり、サマリヤ人を心底憎んでいたからです。しかし、彼らはサマリヤで真実の神様を宣べ伝えました。ここで神様は、私たちに悲しみの中でも前に進む力を与えて下さるお方だということがわかります。そして主は、悲しみの中でも前に進もうという者の行いを見て、それに報いて下さいます（8）。先週、私は西荻南にある教会の取材に行きました。この教会は戦前に建てられ、初代の牧師であった野中牧師は、天皇中心の国の在り方に反対した結果、都内ではなく、愛知県の牢に投獄されました。野中牧師は6年の獄中生活に耐えて出所し、その後すぐ東京で宣教を始めたそうです。彼は間もなく天に召されたそうですが、この話を聞いているうちに、諸地方に散らされたエルサレム教会と重なるところがあると思いました。

　第三に、召しに従い前に進む力が与えられるということです。ピリポ（6：5）は、エルサレム教会の衝突を解決するために選ばれました。しかし彼は教会の外に出て、サマリヤ人に福音を宣べ伝えました。ピリポの仕事は、教会内の衝突を解決するどころではありません。彼はユダヤ人とサマリヤ人との700年に及ぶ衝突に向き合って、サマリヤ人に福音を宣べ伝えたのです。ピリポは、思ってもみない方向に導かれました。このように、神様は時に私たちが思ってもみない方向に私たちを導いていかれます。それに従い前に進めるか否かが、問われているのではないでしょうか。ピリポは悪霊を追い出し、病人を癒していますが、これは誰にでも与えられている賜物ではありません。神様は、ピリポがサマリヤ伝道をする上で必要だから、この賜物を与えられたのです。私たちも主の使命に生きる時、それに必要なものはすべて与えられます。神様の召しに従って、前に進んで行きましょう。

　エルサレムのクリスチャンは、迫害によってエルサレムの外に出て行きました。心の折れるような出来事が多くあり、新しい環境に進んで行かなければなりませんでした。でも彼らは神様に力をいただいて、福音を宣べ伝え続けました。すると、すべてのことが益に変わっていったのです。私たちもエルサレム教会のように、新しい状況で前に進まなければならない時があるでしょう。それでも進む力を主は与えて下さいます。私たちは不安や恐れを越えて、神様に示された場所へと進んで行きたいと思います。

　天の父なる神様、私たちの教会には結婚や新しい仕事によって、新しい環境へ進みだす兄弟姉妹がおります。また、身内や自分の病気によって、新しい環境へ進まざるを得ない兄弟姉妹がおります。しかし私たちは主の祝福を信じて、前に進みたいです。どうか、サマリヤへ下って行ったピリポのように、前に進む力を私たち一人一人にお与えください。（2018年11月4日礼拝　武田遣嗣牧師）