愛する決意　ヨハネの福音書21章15～19節

　私は先週4日間、浜名湖のバイブルキャンプに参加し、講師として子どもたちにペテロのお話を3回しました。今日はヨハネの福音書から、私がキャンプでペテロの話を準備する中で教えられたことを、皆さんにお分かちできればと思います。

　さて、弟子たちはイエス様に「あなた方を遣わします」（20：21）と言われたのに、なぜか漁をしています（3）。確かに弟子の一部はもともと漁師でした。しかしイエス様の弟子になる時、網を捨ててイエス様に従ったはずです。弟子たちはイエス様の復活はうれしいけれど、自分には神様の働きをする資格はないと思っていたかもしれません。そして彼らのもとに、再びよみがえりのイエス様が現れました。

　イエス様はペテロに、「あなたはわたしを愛しますか」と言われました（15）。この問いはギリシャ語で「アガペーの愛で愛しますか」という意味です。アガペーの愛とは、無条件の愛のことであり、神様がどんな条件にあっても私たちを愛するように、ペテロ、あなたもわたしを愛しますか、と問うているのです。それに対しペテロが使った「愛」という言葉（15）は、ギリシャ語でフィレオー、人が友を愛する時に用いる言葉で、アガペーに比べると劣る愛でした。ペテロは、自己保身でイエス様を三度知らないと否定し、自分の弱さと罪を痛感していましたが、「あなたを愛しません」とは答えたくなかったのでしょう。だからフィレオーの愛で愛します、精一杯の愛でイエス様を愛しますと答えることにしたのです。ペテロの素晴らしさは、この精一杯の愛にあるのではないでしょうか。私たちも多くの罪を重ねてきました。でもイエス様は「もうあなたをあきらめた」ではなく、「あなたはわたしを愛するか」と、もう一度共に歩むチャンスを与えて下さる方です。イエス様は今日も皆さんに、「あなたはわたしを愛するか」と問うておられると思います。

　イエス様は三度、「あなたは私を愛しますか」と言われましたが、三度目は「フィレオー」という言葉を使われました。これについて作家の三浦綾子さんは、イエス様がペテロに合わせた、つまりペテロの精一杯の愛を受け入れて下さったのだと言いました。さらにイエス様はペテロに、「わたしの羊を飼いなさい」という、新しい使命を与えられました。イエス様はどん底にいるペテロを、世界中に福音を伝える伝道者に変えられました。私たちは自分の罪によって、何度イエス様を裏切ってきたでしょうか。しかしイエス様は、あなたはわたしを愛するかという問いで私たちに再び使命を与え、遣わして下さいます。今日は聖餐式があり、イエス様の十字架と復活によって私たちの罪がゆるされていることを喜ぶ日ですが、もう一歩踏み込んで、私の罪のために十字架にかかって下さったあなたを精一杯愛しますと一同で告白できればと思います。

　最後に18,19節を見たいと思います。これを一言で言うなら、イエス様を愛する者はイエス様のように生きる、ということです。「わたしに従いなさい」は英語ではフォローで、わたしについてきなさいという意味合いのある言葉です。イエス様はここで、わたしのように人生を歩みなさいと仰っています。私たちのうちには、イエス様を愛しますと言えないもどかしさがあるかもしれません。もし愛しますと言ってしまうと、イエスの道を歩まなければならないからです。しかし、イエス様を愛しますと返答した先に待っているものは、不自由さではありません。イエス様は、イエス様を愛する者の行くところどこにでも共に行かれ、恵みを施して下さいます。私たちは、イエス様を愛しましょう。そして勇気をもって、私はイエスの道を歩みます、イエス様について行きますと宣言する者でありたいと思います。

　天の父なる神様、私たちは人生の中であなたの存在を認めたくない、そう思う時があります。しかしイエス様は、私たちのことを今日まで片時も忘れることがありませんでした。私たちがイエスを知らないと歩んでいた時も、私たちの傍にずっといて下さいました。そして今日も、「あなたはわたしを愛するか」と問うて下さっています。どうぞ、ここにいる一人一人が「わたしはあなたを愛します」と神様に心から返答する毎日を送れるよう、その信仰を励まし、助けて下さい。（2019年8月4日礼拝　武田遣嗣牧師）