博士達のクリスマス　マタイの福音書2章1～12節

　ヘロデ王とは、イエス様が生まれた時、その地方を治めていた王です。人形劇の中で、彼は自分の王座を家来やイエス様に奪われないように必死でしたね。これは、物語をおもしろくするための演出ではなく、彼は本当にそのような王でした。2000年前に書かれた歴史書を読むと、このヘロデ王が自分の王座を奪われないために家来や兄弟まで殺したということが書かれています。また、ヘロディウムという大きな宮殿を建てて、自分の権力を周囲に誇示したことでも知られています。

　さて、東方の博士たちが、ユダヤ人の王様が生まれることを告げた後、ヘロデ王は激しく動揺しました（マタイ2：1～3）。「動揺」は、原語では気が動転するくらい激しい動揺という意味です。ヘロデ王は、赤ちゃんが生まれたというだけで、心が激しく揺れ動いたのです。彼は、自分の地位を奪う芽さえ許すことができませんでした。

　次に、ヘロデ王と仲間たちは聖書からイエス様が生まれる場所を特定しました（2：4）。彼らが開いたミカ書は、ヘロデの時代から700年も前の書物です。そこにイエス様が生まれる場所まで書かれている、それはすごいことだと思います。さらに興味深いのは、ミカが預言した当時、イスラエルを治めていた指導者たちはヘロデ王にそっくりだということです。彼らも自分たちの地位に固執し、人々から金銭を搾取し、人々を苦しめていました。つまり700年も開きがあるのに、人間の心の真っ黒な部分は本質的には変わっていないことがわかります。そして、ヘロデ王から2000年後を生きる私たちの心にも、このような闇があることを聖書は教えています。私たちもヘロデ王のように、自分が重要であることを示すために、周囲の人を言葉で貶めてしまうことがあるかもしれません。重要でありたい、価値があると思われたい、これが人生の中心になっている時、苦しいものです。なぜなら、人の評価は移ろいやすいからです。また、人の評価によって自分の歩みを変えてしまうなら、私たちの人生は一貫性のない、魅力のないものになってしまうのではないでしょうか。

　ヘロデ王は、自分の王座をイエス様から守るために様々な策を講じ、ベツレヘムで生まれた2歳以下の男の子を殺すことさえしました。しかしその後、彼はあっけなく死を迎えます（2：19）。死は、彼からすべてを奪い取ってしまいました。

　一方、イエス様はヘロデ王とは対照的です。イエス様は王の立場を捨て、人間としてお生まれになった方です。イエス様は、神様に従って謙遜に生涯を歩み続けました。そして最後に神様の力によって天国に昇り、真の王様として君臨しておられます。

　人は自ら内にある暗闇（罪）に自分を委ねると、このヘロデ王のような生き方を選んでしまいます。しかしそれは大きなストレスがあり、一貫性のない生き方になってしまいます。イエス様は、「すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます」と仰います。私たちが周囲の評価を気にして疲れているなら、神様の愛を知る必要があるのではないでしょうか。神様は、あなたが人にどう思われていようが、あなたを「高価で貴い」と仰る方です。イエス様は生まれた時から使命が決まっていました。即ち、私たちを罪から救い出すことです。彼は人に流されず、いつも祈りと御言葉から神様の御心を聞き、それに従って一貫した人生を歩みました。皆さんは、イエス様のように歩みたいでしょうか。そのためには、イエス様と共に人生を歩むことが必要です。イエス様を信じるなら、イエス様は私たちの心に住んで下さって、心にあたたかな光を照らして下さいます。

　天の父なる神様、御名を崇め、賛美いたします。私たちは、主が私たちを愛して下さっていることを信じられない時があります。それは自分自身に何か足りない、と嘆いている時に多いのではないでしょうか。しかしあなたは、私たちを高価で貴いと仰います。そして私たちが何もできなくても、私たちに人生の使命を与え、一貫した人生に導いて下さいます。どうぞ、ここにいる一人一人に、御言葉を語りかけて下さい。そして、私たちの内側に住んで下さい。主よ、このクリスマスの時、ここにいる一人一人に、また、今日来たくても来られなかった一人一人に、あなたの祝福が豊かにありますように。（2019年12月22日クリスマス礼拝　武田遣嗣牧師）

☆　礼拝後、会食と祝会を行いました。