遣僕使ブリュッセル便り(6)

 

遣僕使ブリュッセル便り(6)

 

 

ベートーベンの祖父が住んでいたメッヘレン(Mechelen)訪問記

 

 

 

思いがけずベートーベンのお祖父さんが住んでいたメッヘレンを訪ねる機会が与えられた。先述の「アンネのバラ」開拓者ビルフリート・デルフォルジュさんを訪ねた後、N兄がメッヘレンも近いので寄ってくれたのである。メッヘレンはブリュッセルの北約25㎞でアントワープとの中間に位置するところである。

 

 

  ベートーベンのお祖父さんがメッヘレンに住んで「聖ロンバウツ大聖堂」の聖歌隊で歌い、隣にある15世紀に建てられた「聖歌隊堂」で訓練を受けた、と書いたプレートが張ってあった。実際にベートーベンのお祖父さんが住んでいた家は現在、取り壊され道路になり、そこにそのことを表記したものがあるだけとのことであった。これまでベートーベンは単純にドイツ人だと思っていたが、お祖父さんの代までは、れっきとしたベルギー人だった。そのため、ベルギー人は「ベートーベンはベルギー人だ」と主張するらしい。そのお祖父さんがドイツに移り、そこで宮廷楽長になり、その孫としてベートーベンは生まれたのである。ベートーベンは言うならばドイツでの3代目であるから、正真正銘のドイツ人でもある。どちらの主張が世界で認められるのか興味あるところである。

 

 

  ところでメッヘレン訪問ではもう少しうれしいことがあった。メッヘレンは123世紀から織物業が盛んで栄えた街であり、1506年から1530年はネーデルランド(現在のオランダ、ベルギー)の首都として繁栄を誇ったという。現在も「タピスリー美術工房」があり、現代の生活に合うタピスリーを製作している。このメッヘレンは茨城県の西方にある結城市と姉妹都市である。両市とも織物業が古くから盛んであることから結ばれたのだろう。まさかベルギーの古い街メッヘレンと結城市が姉妹都市だとは想像もしなかったので、大変うれしくなった。また、メッヘレンで大きなプレゼントをもらった。それは「聖ロンバウツ大聖堂」にある巨大なカリヨンの音色を聞くことが出来たことである。この大聖堂にあるカリヨンは約80トンもあるヨーロッパでも最重量級のカリヨンで、近くに「王立カリヨン学校」がある。時間によって、また練習のためか何度か短い節を鳴り響かせてくれた。

 

 

  小生の体調があまり良くないので、ブリュッセル市内を歩いたことはない。今回のサンニコラとメッヘレン訪問で、ブリュッセルに来て初めて市外に出たのであった。